どんな病気?

乳房にできる、がん。はっきりした原因はわかっていないが、疫学データから、高カロリーの食生活による肥満、初経年齢の低下、初産年齢の高齢化によって高レベルのエストロゲンが長期間分泌され続けることなどが影響しているのではないかといわれる。
早期発見なら、乳房を温存した治療で完治するが、進行すると死にいたる。年に一度の定期検診と、自己触診で早期発見を心がけたい。乳がんは、自分で発見できる唯一のがん。本人の意識が重要なポイントとなる。

検査・診断

乳がんは女性特有の病気だから、婦人科と思いがちだが、担当は外科(乳腺外科)や乳腺外来。触診だけでは有効な検査とはいえないので、きちんとした検査を受けるためには、マンモグラフィの設備があるかどうか確認してから行ったほうがよい。
初診では、問診表に、初経、最後の生理の時期や生理の様子、妊娠出産の経験など基本的なことを記入、診察室では上半身裸になり、医師が視診(乳房にくぼみやひきつれがないか、乳頭から分泌物が出ていないかどうかチェック)と触診(しこりがないかどうかチェック)を行う。さらに年齢やがんの状態によって、超音波検査、マンモグラフィ検査、MRIなどの画像診断を行い、がんの大きさ、進行度を判断する。年齢が若い場合には、超音波のほうが適している場合もあるが、40歳以上の検査にマンモグラフィは欠かせない。乳房を板ではさんで均等にならし、X線撮影を行うもの。人によって、痛みを感じることもあるが、とくに、しこりとして触れない「石灰化」はマンモグラフィでしか発見できないので、必ず受けるようにしたい。 マンモグラフィなどの結果から、がんの可能性が高い場合、確定診断のために細胞診(しこりがあるところに、注射針を刺して、細胞をとって顕微鏡で観察する検査)、がんの広がりを調べるために組織診(局所麻酔をして、鉛筆の芯ほどの太さの針を刺し、組織をとって調べる検査)を行なう。

治療

がん病巣を手術で取り除くのが基本。がんの進行期によって、切除する範囲が異なり、早期発見の場合は、乳房温存療法が選択できるが、そうでない場合は乳房とリンパ節を切除して、化学療法を行なう。ごく早期の場合、日帰り手術で完治するケースもある。温存療法は乳がんの手術全体の4割を超え、年々増加傾向に。ただし、温存療法を選択するには、本人の希望のほかに、しこりの大きさが3cm以下で、しこりが1つしかない場合、しこりの外側にがんが広範囲に広がっていない場合、温存療法のあと放射線療法ができる場合(甲状腺の病気など持病がない場合)など、条件が限られており、どんな場合にもできるとは限らない。
乳房以外の場所に遠隔転移するリスクは、乳房を切除しても、温存してもほぼ変わらないが、温存した場合、乳房が残っているぶん、乳房内にがんが再発する可能性が10年間で1割ほど残る。手術後も自己触診と定期検診は欠かさずに続ける必要がある。
温存療法を受けたあと、再発予防のためにホルモン療法を行うこともある。血液検査でホルモン受容体がプラスでないとホルモン剤の効き目が現れないので、調べてから行う。
乳がんが最初に転移するのはリンパ節。乳房にできたがんを切除するときに、一緒に取り除いて転移しているかどうかを調べるため、日本ではほとんどのケースに対してリンパ節切除が行われている。リンパ節を切除すると、傷跡も大きく、後遺症が残る可能性もあるため、切除する前に色素などをリンパの流れにそって注入し、転移があるかどうかを確認する方法も開発され、海外ではすでに普及している。
乳がんの手術は縮小傾向にあり、乳房温存療法も普及しているものの、早期発見であることが前提。年に1度のマンモグラフィのほかに、日常的に自分の乳房に関心をもち、わずかな変化でも見逃さない意識をもちたい。外来で発見される乳がんのしこりの大きさは平均3cm弱で、すでに温存を選択できるかどうか微妙な大きさだが、自分でふだんから意識して触診していれば、1㎝以下の小さなしこりでも発見可能。早期発見ならば命だけでなく乳房を残すことも選択できることを忘れずに。