どんな病気?

精神的、肉体的に様々な症状が現れる「うつ」ですが、日本人の5人に1人は一生のうちどこかでうつ病を経験すると言われています。
気分や意欲に関わる情報をコントロールするセロトニンやノルアドレナインの分泌が減ることにより脳神経の働きが弱まり、様々な症状が起こると考えられています。
うつ病は世間一般に認知されるようになってきましたが、実際に治療を受ける人はまだまだ少なく、周囲からも「単なる甘え」「怠け病」という目で見られ、本人も病気と気づかず、適切な治療を受けずに苦しんでいる場合も多くあるようです。

うつ病は治らないのか?

うつ病は適切な治療を施せば治る病気です。しかし、放っておくと症状の悪化を招き、ひどい場合は自殺などの心配も出てきます。
早めに受診することで適切な治療を行うことが大事です。気の持ちようで治るということはありません。

うつ病の症状

現代では軽症で何年も続くという新しいタイプの患者さんが増えてきています。
単なる気分の落ち込みなのか、病的なものなのかを見分ける目安を知っておきましょう。

【精神面】
・何をするのもおっくうで時間もかかる
・集中力が落ち、効率よく仕事ができない
・人に会ったりするのが嫌で、人と一緒にいることが辛い
・心配事や悲観的な考えが四六時中頭から離れない

【肉体面】
・眠れない、頭痛、めまい、食欲不振、胃部不快感、便秘、口が渇く、肩こり、
背中や腰の痛み、動悸、息切れ、手足のしびれ、寝汗、排尿困難、制欲低下、月経不順など

うつかどうか見分けるポイント

1. 気分の落ち込みや不調が2週間以上続く
2. 仕事や生活に支障がある
3. 検査を受けてもわからない身体的な症状がある

原因

誰もが多くのストレスを抱えている現代では原因を特定することが難しく、また誰でもうつ病になる可能性があります。
中でも次のような人はうつ病になりやすいと言われています。

・真面目で仕事熱心
・完璧主義
・几帳面
・仕事や家事を人に任せられない
・思考の柔軟性に乏しく融通が利かない
・人にどう見られるか常に気にしている

検査・診断

以前は原因別に分類がありましたが最近では症状の程度と持続期間による分類(大うつ病、軽症うつ病)が行われるようになってきました。
患者さんの症状に合わせて「DSM-IV」というマニュアルが多く採用されるようになっています。

A. 食欲減退もしくは過食
B. 不眠もしくは過眠
C. 気力の低下、あるいは疲労
D. 自尊心の低下
E. 集中力、判断力の低下
F. 絶望感
以上のような症状の程度と期間により診断が行われます。

軽症うつ病
次の2点が当てはまる場合は軽症うつ病の可能性が高いと考えられますが、軽症うつ病の診断基準はまだ確定しているわけではありません。

1. 1週間以上、うつうつとした気分がほとんど毎日続いている。
2. 1週間以上、何事にも興味を持って取り組めず、喜びも感じられない状態がほとんど毎日続いている。

大うつ病(Major Depressive Disorderを和訳する際に「大」がついたためそう呼ばれているが通常のうつ病を指す)

次の項目のうち5つ以上が当てはまり、1年以上続いている場合に大うつ病の可能性があります。(但し項目の1と2を必ず含む)

1. 抑うつ気分がほとんど1日中続くことがそうでない日よりも多く、少なくとも1年間同じような状態が続いている。
2. 1で述べた抑うつ状態に加え次の6項目のうち少なくとも2項目以上が1年も2年も続いている。
3. 特に食事療法をしていないのに体重が減ったり、増加したりする。または食欲がなくなったり、増進したりする。
4. 十分な睡眠が取れなかったり睡眠過多になったりすることがほとんど毎日続いている。
5. すごく焦ってイライラしたり、まるで元気がなくなったりする状態がほとんど毎日続いている。
6. 理由もないのに疲れやすくなったり、気力が減退したりする状態がほとんど毎日続いている。
7. 自分は全く価値のない人間だと深く思ったり、自分はとても罪深い人間だと思い込んだりする状態がほとんど毎日続いている。
8. 思考力や集中力がなくなって、何かを判断したり決断したりする能力がなくなる状態がほとんど毎日続いている。
9. 死について繰り返し考えるようになった。特別な計画はないが自殺したいと繰り返し思ったり、
どうやって死のうかと計画を立てたり考えたりする。

治療

基本的には休養が大事です。合わせて薬物療法、精神療法を組み合わせて行われます。

休養の大切さ
うつ病になる人は「周囲に迷惑をかけてはならない」という気持ちが強く、仕事を休むことに抵抗を感じることが多いようです。しかし、思い切って休み、心身の休養をとることにより治療も短期間で済み、回復を早めることができます。

薬物療法の重要性

最近のうつの治療薬は効果が高く安心して服用できるものになっています。副作用(口が渇く、便秘、排尿障害など)が現れたら勝手に判断せず医師に相談することが大切です。自己判断で薬を中止すると症状が悪化する場合があります。

うつ病に用いられる主な薬

抗うつ薬
・三環系抗うつ薬
・四環系抗うつ薬
・その他の抗うつ薬
・SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)
・SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)
・NaSSA(ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬)

※三環系、四環系とは化学構造に亀甲の環を3つ、あるいは4つ持つもの

効果
急性期の治療から、再燃、再発防止のための治療に使われています。
脳内神経に作用するもの、セロトニン系の神経に作用するものなどがあります。

抗不安剤

かつては精神安定剤、マイナートランキライザーなどと呼ばれていました。
そのため、依存症になるのではないか?やめられないのではないか?と不安になる患者さんも多くいます。不安や緊張を改善するとされ、短時間での効果が期待できます。うつ病そのものの治療薬ではありませんが、きちんと服用することによりうつの治療に役立ちます。

睡眠薬

うつの患者さんに多い、「不眠」の改善を目的として処方されます。
短時間の効果のものから長時間効果を発揮するものまであり、症状に応じて処方されます。
※ 症状に応じて何種類かの薬を併用することもあります。
精神療法

医師やカウンセラーとの面接により抱えている悩みや不安を取り除いていきます。睡眠がとれ、治療薬の効果がある程度現れてきてから始めます。

うつは、かぜのようなものと言われますが、かぜの治療と同じく休養と早めの治療が重要です。しっかり治療しておかないとすぐに再発する恐れがありますから薬物療法、精神療法は根気よく続けることが大切です。

治療をよりよく進めるポイント
1. うつ病は病気であるという認識を持つ
2. 治療には休養が必要である
3. 治療のために半年から1年ほどの期間が必要である
4. どんなに辛くても自殺だけはしない
5. 大事な決定はしない
6. 治療中の「一進一退」を理解する

うつ病の人が周りにいる場合

1. 不用意に励ましたりしない。頑張れと言うよりも休養をすすめる。
2. しつこく気晴らしに誘わない。
3. 症状がひどい時は受信を進める。
4. 本人の言動に注意する。自殺願望が疑われたら早急に医師に相談する。

⚫治療にあたっては必ず専門医に相談してください