肺炎
どんな病気?
肺炎は細菌やウイルスなどの感染により肺に炎症が起こった状態を指します。
一般に体力が落ちている人や高齢者などがかかりやすいと言われており、日本国内では年間約8万人が肺炎で死亡しています。
細菌やウイルスは鼻や口などから侵入して肺炎の原因となります。
健康な人であればこれらの病原菌を退けることができるのですが、風邪などで喉に炎症が起こっている場合や免疫力が弱っている場合には菌が肺に入り炎症を起こしてしまいます。
肺炎は細菌の感染力が人の免疫力を上回った場合にのみ発症しますので、風邪にかかった人が全て肺炎にかかるわけではありません。
肺炎の症状
- 咳
- 悪寒
- 胸痛
- 喀痰
- 呼吸困難
などです。
これらの症状が数日間続き、診察時に見られる兆候は浅くて早い呼吸、頻脈、気管支呼吸音、水泡音などが認められます。
重度の場合、唇や爪などの色が青黒くなるチアノーゼが見られることもあります。
原因
肺炎には幾つか種類があります。病原菌の種類や感染した環境により次のように分類することができます。
A. 市中肺炎
◯肺炎球菌、インフルエンザ菌など一般細菌によるもの
◯マイコプラズマ、クラミジアなど細菌以外の病原体
これらは通常の生活を送る人に見られる肺炎です。
B. 院内肺炎
◯グラム陽性菌、グラム陰性桿菌など
これらは一般的に入院後、48~72時間以後に発症します。基礎疾患などの治療により病原菌が異なります。
C. 嚥下(えんげ)性肺炎
◯口腔内常在菌
高齢者や手術後の方に多い肺炎です。
検査・診断
肺炎の診断は、ほとんどの場合、胸部X線によって確定されます。肺炎を起こしている病原菌の特定のためには痰や血液の検査が行われます。それにもかかわらず、正確な病原菌を特定することができないケースは患者さんのおよそ半数にも登ります。
検査項目
・胸部X線検査
・血液検査
・病原菌の特定
これらの検査をもとに重症度を判定し、治療を入院で行うか外来で行うか、また抗菌薬を点滴で行うか経口剤で行うかを判断します。
治療
肺炎の治療は化学療法と対症療法の二つがあります。
原則として軽症、中等症の場合で脱水をともなわない場合は外来での治療になります。入院が必要になるのは中等症で脱水症状がある場合と重症の場合です。高齢者で通院が困難な場合は入院治療となります。
適切な抗菌薬を使用し治療すれば1~2週間で治癒しますが、免疫力が低下している場合や高齢者、もしくは複数の菌に感染している場合などは重い症状を示し、死亡することもあります。
化学療法での治療
肺炎の場合病原菌を特定するのに時間がかかるため、まず予想される病原菌に対する治療(エンピリック治療)を行います。その後病原菌が特定されたら治療薬の変更などを検討することになります。
エンピリック治療で使われる抗生物質には、疑われる肺炎の分類により幾つか種類があります。
肺炎で使用される主な抗生物質
- 広域ペニシリン
- セフェム系薬
- ニューキノロン系薬
- マクロライド系薬
- テトラサイクリン系薬
- 第2、第3世代のセフェム系薬
- リンコマイシン系薬
- ペニシリンG
など。
対症療法での治療
咳や痰、発熱に対する治療を行います。
◯鎮咳薬(麻薬性と非麻薬性があります)
咳を鎮める効果があります。
麻薬性の鎮咳薬の場合副作用として便秘や嘔吐、血圧低下などがあります。
非麻薬性の鎮咳薬では腹痛や下痢、食欲不振、口渇などがあります。
◯去痰薬
気道分泌促進剤 痰を薄めて出しやすくします。
気道粘液溶解剤 痰の成分を変化させ痰を出しやすくします。
気道粘膜修復剤 気管支粘膜の修復を促進し、粘液構成成分を調整します。
※薬は処方通りに服用し分からないことは必ず専門医に相談してください。