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骨髄非破壊的前処置療法を用いた同種造血幹細胞移植に関する研究
実施計画書

データセンター識別番号:HE0204

プロトコール名

骨髄非破壊的前処置療法を用いた同種造血幹細胞移植に関する研究
〜非ホジキンリンパ腫を対象としたリン酸フルダラビンとブスルファンによる前処置の安全性・有効性の検討〜

研究組織

平成14年度厚生科学研究費補助金(ヒトゲノム・再生医療等研究事業)
「骨髄非破壊的前処置療法を用いた同種造血幹細胞移植の開発」(高上洋一班長)

プロトコール状況

登録開始日:2002年11月
現在登録受付中

研究タイプ

多施設共同一般臨床試験(第I/II相)

背景

『同種造血幹細胞移植とその合併症』

造血幹細胞移植術は、多くの造血器腫瘍に対する治癒を望み得る治療の一つとなりつつある。しかし本治療法の最大の障害は、graft- versus-host disease(GVHD:移植片対宿主病)、強力術前療法による臓器障害、間質性肺炎、重症感染症などの治療関連合併症が多く発生することである。特に 50歳以上の症例や、移植前に既に臓器障害を有する症例では、これらの合併症の頻度と重症度が極めて高くなるため、いかに幹細胞移植が唯一の根治的治療選択であると判っている場合でも、危険性が高いため、本治療法の恩恵が得られるのは、現在では少数の患者に限られている。その後、白血病においては軽度の GVHDが発生した場合のほうが、全く起こらなかった場合に比べて再発率が低下する、いわゆる、移植片対白血病(graft-versus- leukemia: GVL) 効果が分かってきた。さらに、同種移植後に再発した白血病がドナーリンパ球輸注(donor leukocyte infusion: DLI)に反応するという事実が確認され、同種リンパ球を介した抗腫瘍免疫が重要な役割を占めているが示されてきた。

これまで、同種骨髄移植施行直前に行う大量抗癌剤療法や全身放射線照射の意義として、ドナー由来の造血細胞が定着するための骨髄内の空間(niche)作りと免疫抑制が重要と考えられてきたが、最近になって、大量の造血幹細胞の移植や十分な免疫抑制を行うだけで良いとの基礎データが示され、骨髄移植時の治療関連毒性の主原因を回避する方法が示唆されるに至った。臨床的には、強力な免疫抑制効果を有するものの、その他の臓器毒性が少ないリン酸フルダラビンや cladribine(2-chlorodeoxyadenosine)などのプリン誘導体を用いることで、従来の術前療法と比較して治療関連毒性が軽い、 "non-myeloablative"(骨髄非破壊的)な薬剤を用いて同種移植を行う新しい方法、すなわち、"mini- transplantation"(ミニ移植)が導入されるに至った。

『悪性リンパ腫と通常の同種移植』

抗ガン剤に感受性を有さないaggressive lymphoma, 進行期indolent lymphomaに対する自家移植の有効性は限られている。一般に、自家移植では腫瘍細胞の再輸注が再発の原因となる可能性があり、移植後再発が問題となっている。
一方、同種移植においては、アロ免疫を介した免疫学的抗腫瘍効果が働くため、優れた抗腫瘍効果が期待できる。悪性リンパ腫に対するgraft- versus-lymphoma effectの存在については、数多くの研究がなされ、その存在がすでに確認されている。しかし、同種移植においては、治療関連死亡も高率に生じるため、悪性リンパ腫に対する通常の同種移植の有用性についてはコンセンサスが得られていない。これまでに、治療不応性、再発悪性リンパ腫を対象とした、幾つかの臨床試験が報告されている。
MD Anderson Cancer Centerのvan Besianらは、雑多な組織型(low-grade n=15, intermediate n=14, LBL n=25, Burkitt n=10)を含む悪性リンパ腫再発例を対象として、salvage settingでの同種移植の有効性を評価している。この報告ではlow-grade lymphomaの2年PFSが59%であったが、他の組織型での有効性は低かった。Low-grade lymphomaを除き、化学療法不応性の症例に対する同種移植の有効性は低い事が示唆された。
また、IBMTRは進行期indolent lymphomaに対する同種骨髄移植の成績を報告したが、3年生存率は49%、再発率は16%であった。
Chopraらは100例の悪性リンパ腫患者を対象に同種移植と自家移植のcase control studyを報告している。この報告によれば、同種移植群においては、再発は有意に少ないものの、治療関連死亡の頻度が高く、生存率には有意差を認めていない。
いずれの報告でも、悪性リンパ腫の同種移植においては、治療関連死亡が大きな問題となっており、新たな移植法の開発が期待される。

『悪性リンパ腫に対するミニ移植』

悪性リンパ腫の同種移植においては、治療関連死亡が重大な問題である。ミニ移植を用いることで、治療関連死亡を低下させることができる可能性がある。この意味で、ミニ移植は悪性リンパ腫において魅力的な治療法である。
これまでに、悪性リンパ腫に対するミニ移植の有効性についても、複数の施設より報告されている。いずれの報告でも、再発難治例を対象として40-55%の有効性である。我が国の場合、国立がんセンター、及び、虎の門病院で行われた非ホジキンリンパ腫20例(indolent 13例、aggressive 7例)の報告では、PR以上の反応は移植時に完全寛解でない17例中、15例で認められた。移植後100日の治療関連死亡率は5%であり、1年生存率は 67%と比較的良好な成績であった。
Michalletらは、92症例のミニ移植を受けた患者の予後因子を解析したところ、悪性リンパ腫症例は他の疾患と比べ予後が良好であり、統計的に有意な独立した予後因子であると報告している。このような症例に治癒を期待できる治療法が存在しないことを考慮すれば、ミニ移植は悪性リンパ腫の非常に有望な治療法であると考えられる。
ミニ移植においても、より残存する腫瘍細胞が少ないほど免疫学的な抗腫瘍効果が期待しやすいことから、ある程度、腫瘍に対して効果の期待できる薬剤が選択される。非ホジキンリンパ腫などのリンパ系腫瘍に対しては、リン酸フルダラビンにシクロホスファミドを組み合わせた前処置が広く行われているが、この方法を用いた場合、混合キメラの頻度が高く、ドナーリンパ球輸注を要することが多い。ドナーリンパ球輸注の頻度が増えることは、ドナー・医療者への負担を増加させる可能性がある。ブスルファンは、ミニ移植の前処置として汎用される薬剤の一つである。同様の組み合わせにリン酸フルダラビンにメルファランの組み合わせがあるが、この方法はリン酸フルダラビン、ブスルファンの組み合わせと比べ毒性が強いと考えられている。いずれの方法でも完全キメラの達成が早く、ドナー型キメラが早期に達成できることが報告されており、臨床的な有用性は高い。

目的

リン酸フルダラビンとブスルファンを併用した骨髄非破壊的な前処置療法を用いて50歳以上70歳未満の非ホジキンリンパ腫患者を対象としたミニ移植術を行い、高齢者における本治療法の有用性(安全性・有効性)を検討する。

主要評価項目

移植後100日時点での生存、及びドナー型完全キメラの達成
(移植後day 90±5の時点でdonor由来細胞が90%以上)

副次評価項目

GVHDの頻度・重症度の検討

  • 移植後1年の生存率および無病生存率
  • 前処置の毒性(移植後20日以内)
  • GVHDの頻度・重症度の検討
  • GVHDの発症時期、キメラとの関係
  • 造血回復までの期間、完全キメラ達成までの期間
  • ドナーリンパ球輸注による移植片拒絶の防止、抗腫瘍効果
  • 組織型ごとの生存率、無増悪生存率
  • 腫瘍縮小効果の検討

症例の適格規準

HLA一致血縁者間同種造血幹細胞移植のドナー及びレシピエント

病理診断

初発時、あるいは再発時の病変部位の生検にて、組織学的に以下の何れかの診断が確定している症例。

  1. Mature B-cell neoplasms
    1. Indolent lymphoma group Chronic lymphocytic leukemia (B-CLL) (9823/3)
      Small lymphocytic lymphoma (SLL) (9670/3)
      Lymphoplasmacytic lymphoma (LPL) / Waldenstr macroglobulinemia (WM) (9671/3)
      Splenic marginal zone lymphoma (SMZL) (9689/3)
      Extranodal marginal zone B-cell lymphoma of mucosa-associated lymphoid tissue (MALT) (9699/3)
      Nodal marginal zone B-cell lymphoma (NMZBL) (9699/3)
      Follicular lymphoma
      grade 1 (FL grade1) (9691/3),
      grade 2 (FL grade2) (9695/3)
      Small (low-grade) B-cell lymphoma, not otherwise specified (SBL) (No code)
    2. Aggressive lymphoma group
      Mantle cell lymphoma (MCL) (9673/3)
      Follicular lymphoma grade 3 (FL grade3) (9698/3)
      Diffuse large B-cell lymphoma (DLBL) (9680/3)
      Mediastinal (thymic) large B-cell lymphoma (MLBL) (9679/3)
      Intravascular large B-cell lymphoma (IVL) (9680/3),
      Primary effusion lymphoma (PEL) (9678/3)
      Burkitt lymphoma/leukemia (BL) (9687/3, 9826/3)
  2. Mature T-cell and NK-cell neoplasms
    T-cell prolymphocytic leukemia (T-PLL) (9834/3)
    Peripheral T-cell lymphoma, unspecified (PTCL unspecified) (9702/3)
    Angioimmunoblastic T-cell lymphoma (AILD) (9705/3)
    Anaplastic large cell lymphoma (ALCL) (9714/3)

※病理分類はWHO分類(87)に従う。

※充分な組織診断が行えた場合は、針生検のみでも適格とする。

※病理診断は最終的に病理中央診断パネリストによる中央判定を実施するので、登録根拠となる病理診断が下された代表的な組織標本を症例登録後に運営事務局 上 昌広まで送付する。

病期

仮登録前4週間以内に実施した検査にて、以下の何れかの病期を満たす症例。
なお、仮登録時の検査から本登録まで4週間を超える場合は再度検査を実施し、以下の病期であることを確認する。

1) Mature B-cell neoplasms
  1. Indolent lymphoma
    • 初回治療でstable disease(SD)の症例。
    • salvage 治療に対する反応性がPR、SDの症例。
  2. Aggressive lymphoma group
    • Diffuse large B-cell lymphoma, Mantle cell lymphoma以外の場合
      • 初回治療でPRの症例。
      • salvage 治療に対する反応性がCR, PRの症例。
    • Diffuse large B-cell lymphomaの場合
      • 初回治療でPRの症例。
      • salvage 治療にてPRの症例。
      • salvage療法でCRとなったが、主治医が自家造血幹細胞移植の適応外と判断した症例。
    • Mantle cell lymphomaの場合
      • 初回治療でCR、あるいはPRの症例。
      • salvage 治療に対する反応性がCR, PRの症例。
2) Mature T-cell and NK-cell neoplasms
  • 初回治療でPRの症例。
  • salvage 治療に対する反応性がCR, PRの症例。
Salvage 療法
以下の二つの場合を示す。
  1. 初回治療でCR、あるいはPRに到達しない場合に、CR、PRを目指して行う初回治療とは異なるレジュメン。
  2. 初回治療でCR、あるいはPRに到達した後に再発、再燃した場合に、CR、PRを目指して行うレジュメン。必ずしも初回治療と異なる必要はない。

仮登録時に患者が下記の選択基準を満たすことを確認する。

  • 年齢が50歳以上、70歳未満
  • ECOGのperformance statusが0,1
  • 初回同種造血幹細胞移植であること。自家造血幹細胞移植を含め、これ以外の前治療歴は問わない。
  • 健康状態が良好であるHLA一致の血縁者ドナーを有する者
  • 試験参加について患者本人から文書での同意が得られている。

除外基準

下記の除外基準のいずれかに該当する患者は、不適格と判断する。

  • 酸素非投与での動脈血液中酸素飽和度が93%未満
  • 血清クレアチニン値が2.0 mg/dL以上
  • 血清総ビリルビン値が2.0 mg/dL以上、あるいはGOT値が施設基準値上限の4倍以上
  • インスリンの継続使用によってもコントロール不良の糖尿病を有する症例
  • コントロール不良の高血圧症を合併する症例
  • 心筋梗塞、うっ血性心不全の既往、または、不安定狭心症を合併する症例
  • 心エコーにて、安静時の心駆出率が50%未満
  • HIV抗体陽性の症例
  • HBs抗原陽性(HCV感染は移植後肝障害に与える影響は明らかでない(88)ため、除外しない。)
  • 活動性の重複がんを有する症例
  • 精神病、または精神症状を有しており、試験への参加が困難とされる症例
  • 活動性の感染症を有する症例
  • 前処置療法に用いる薬剤、または急性GVHD予防に用いる薬剤に対し過敏症の既往のある症例
  • 妊娠の可能性のある症例、及び授乳中の症例
  • その他、研究担当医師が不適当と判断した症例

ドナーの条件

十分な心・腎・肝機能を有するHLA一致血縁者ドナー。ドナー本人の自発的意思による、この試験の参加への同意が得られること。(詳細については日本臨床試験ユニット「血液領域」をご参照ください。)

試験薬剤

リン酸フルダラビン、ブスルファン、シクロスポリン、メソトレキサート

症例数と症例集積期間・進捗状況

予定症例数:30症例 (評価可能例として23例)
症例集積期間:約1年
追跡期間:1年
登録症例数 (2003年1月現在)  仮登録:0例、本登録:0例